子育て

子どもの描いた絵、どう評価する?アート思考を伸ばす考え方

子どもを持つ人は、みんな1日の時間が足りず、常に何かに追いかけられています。そんな毎日の中で、私は子どもの「お絵描き」を受け止める心の余裕もない自分を感じていました。子どもがよちよち歩きだった頃は、クレヨンのなぐり描きにすら歓声を上げていたのに、保育園や幼稚園に通い始めて毎日のように持ち帰る子どもの絵の中身よりも「保管場所」のことばかり考えてしまう・・・。そんなときにたまたま本屋さんで出会ったのが「13歳からのアート思考」という本。親が少し視点を変えるだけで、子どものアートの芽を伸ばす手助けにも、「アート思考」を養うプロセスにもなることがわかりました。本のタイトルには13歳というキーワードが入っていますが、何歳でも役立ちます。我が家の子供は小学生になったばかりですが、日常的に子どもの絵を楽しみ、親子でアートそのものを楽しむきっかけになりました。

親は子どもの絵にどう反応しているか

上手いね、ととりあえず褒める私

子どもはみんなアーティスト!と言うけれど、実際、仕事や子育てに追われていると、なかなか理想的なリアクションが取れないもの。「もうちょっと言えることあったかな…」と軽い罪悪感を感じつつもとりあえず、「上手いねえ」というコメントを使う回していることが多かった気がします。正直、リアクションの正解が分からなくて、モヤモヤしていました。

こうすると良くなるよ、と要らぬアドバイス

自分の子どもの絵を他人の子供と並べる機会があったとき、ついつい「上手いかどうか」という技術的な物差しで見てしまうことがあります。「ここはこうした方がよかったね…」などとお節介なアドバイスをしてしまうことも。知らぬ間に、大人の物差しで子どもの絵を見てしまっていて反省することも少なくありません。

絵には子どもの「ものの見方」が隠されている

そんな私が、ふと手にとった「13歳からのアート思考」という本。正直、目から鱗が落ちました。そもそも、私は「アート思考」って?というところから知る必要があったのですが、この本によれば「アーティストのように考える」ということだそう。もっと具体的に言うと、アートを通じて「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」を作り出すための作法なのだとか。激変する今の世の中で、この「自分なりの答えを出せる人間になれるか、がとても大切と言われます。

つまり、子どもの絵を通じて「この子はどんなものの見方をしているのか」がわかり、同時に、親の反応や声かけ次第では「自分なりのものの見方」を深めていく手助けまでできるというわけです。

絵ができあがる「過程」に目を向ける

そもそも、この本ではアートとは3つの要素で構成されているものだ、と著者は定義しています。

【アートを構成する3要素とは?】

以下のように、アートを植物に見立てて、わかりやすく説明してくれています。

  • 表現の花
  • 興味の種
  • 探究の根

一般的に、眼に見えている「花」の部分に目が行ってしまう人が多い。ところが、実はアート活動の根源となるのは「興味の種」やこの植物の大部分を占めるのは地表には出さない「探究の根」の方だと言います。つまり、アートにとって本質なのは、作品が生みされるまでの過程(種や根)の方だ、と言うのです。

美術の授業などで行われている「絵を描く」「モノを作る」「美術の知識を得る」などの教育は、アート部分の一部である「花」にスポットを当てているに過ぎないと言います。

そう考えると、子どもの絵がどんなに上手に絵が欠けたとしても、精巧な作品が作れても、それはあくまで「花」の話。親は「あの子の絵は上手い」「うちの子の絵は下手」などと批評しがちであったりするわけですが、自分の子どものアートの芽をぐんぐん伸ばしたいなら、すぐに花開くことを求めなくてもいいのかもしれません。「種」や「根」の部分に目を向けてあげたほうが、植物としてたくましく、いつまでも綺麗な花を咲かせられるのかもしれません。タネがなければ花は咲かないし、根が枯れていたら花もすぐに萎れてしまうわけですから。

子どもの絵もピカソもみんなアート

じゃあ、「種」や「根」に目を向けると言うことは、実際に何をすることなのだろう?と考えると、もしかしたら、親としてやれることは子どもの描いた作品を「アートして見る」ということなのかな、と思います。ピカソだって写実的な絵もあれば、抽象画もある。抽象画なんて見方によっては「ヘタクソ」と解釈する人がいるかもしれません。やっぱり巧拙だけで見てしまうと、絵の本質が見失われてしまいます。技術が拙い幼少時ならなおさら「種」や「根」の部分をしっかり見ることが重要なのかもしれません。

寝室で子どもと絵について語り合う

しかし日々、仕事や家事、子どもの宿題のフォローなど、忙しくしていると、そこまで踏み込んだ会話をする心の余裕って、なかなか生まれないのも事実。そこで、我が家では、寝室の壁に、子どもが描いた絵をベタベタ貼ることにしました。とにかく子供が絵を持ってきたら、寝室の壁にマスキングテープでベタベタ貼る。そして寝る前の数十分、お布団に入りながら、子供と二人で絵について色々と話します。就寝前は、忙しい母でも1日の中では比較的心穏やかに過ごす時間。日中や夕方の多忙な時間よりも、ゆっくり語り合うことができます。

最近では、子ども本人の絵のばかりではなくて、絵本の挿絵やイラストを見たり、友達からもらった絵も見て話したりすることも増えてきました。

絵も、音楽を聴くときと同じスタンスでOK

この本では、「作品をどう鑑賞するか」という具体的な鑑賞のための考え方も説明されています。なかでもわかりやすいなと思ったのは、「音楽を聴くときのスタンスと同じでOK」ということ。

音楽を聴くときには、その音を聞いて、純粋に自分がどう感じるかが多くを占めますよね。ひょっとしたら、曲を作った人の意図や背景に興味を持つこともあるかもしれません。でも、絵を見る時って、なぜか、正しい解釈って何だろう?とか多くの人評価しているのだから、素晴らしい作品なんだろう、と考えてしまいます。絵を見るときも、自分自身がどう感じるかももっと大切にして良いいというわけです。実際のところ「アート思考」とは自分自身がどう感じ、どう解釈するかということ。これからは答えのない課題に対して、自分自身がどう解釈するのか、そこが重視されていくのですから、このプロセスがとても大切になるのでしょう。

「13歳からのアート思考」のすすめ

この本を読み、子どもの絵の受け止め方が変わりました。と同時に、そもそも「好きか嫌いか」「上手いか下手か」の物差ししか持ち合わせていなかった自分のアートとの向き合い方も大きく変わりました。

エジプトの壁画からルネサンス絵画、印象派、ポップアートの時代まで、ブツ切りのように見えていた美術史の変遷が実は必然的な流れであることも知らなかったし、今や作品はアーティストによってのみ作られるものではなく、見る人の解釈が作品を新しい世界に広げていることまで、新たな気づきばかりでした。

もともと、絵画展に行っても「この絵はどう評価したらいいのだろう?」と誰かの解釈を求めて考え混んでしまうこともしばしばだった自分。この長年のモヤモヤに対する答えも見つかったような気がします。これからは、子どもの絵もアーティストの絵も、すぐに誰かの答えや巧拙の結果を求めずに、解釈することを自体を楽しみたいと思います。生活は全てアート、なのかもしれませんね。

(この記事を書いた人)shimo

フリーランスのライターと会社員半々の生活をしながら、仕事と育児と遊びのバランスを日々、試行錯誤中。読書、映画、マリメッコ が好き。現在カメラ勉強中(愛用機:SONY α7c、RICOH GR Ⅳ、RICOH GRX)。毎日、「1万歩歩くこと」「心に残った写真を必ず1枚撮影すること」が自分の日課。

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